細菌性腟症/細菌性腟炎とは
細菌性腟症/細菌性腟炎は、腟内細菌のバランスが崩れた時に起こる腟感染症です。女性器の炎症のため、女性だけの病気です。
通常、腟内は「乳酸桿菌」(Lactobacillus spp.)が常在し、脱落した腟粘膜上皮のグリコーゲンを乳酸に変え、腟内をpH4.5以下の酸性に保つことで、雑菌の侵入や増殖を防いでいます。しかし何らかの原因で、この「乳酸桿菌」が少なくなり、さまざまな菌が異常に増殖した状態が「細菌性膣症」です。膣トリコモナス症や性器カンジダ症とは区別されて総称されます。魚のにおいのような悪臭を訴えることもあります。
細菌性腟症が性行為によって感染するかどうかは分かっていませんが、現時点では、細菌性腟症は以下に該当する人に多くみられると言われています。
- 複数のセックスパートナーがいる方
- 子宮内避妊器具を使用している方
- ストレスの多い生活をしている方
- 経口避妊薬を使用している方
- 喫煙をしている方
しかし、細菌性腟症は処女にも発生することがありますので、性病や性感染症とは限りません。複数のセックスパートナーがいる方におこりやすいですが、性的パートナーを治療しても臨床経過に影響はないこと、パートナーも無症状なことから、再発防止のためにパートナーを治療しなくてもよいとされています。
(日本性感染症会誌 Vol.19, No1 Suppl. 2008)
症状について
女性 | 男性 | |
主な症状 | 約半数は無症状です。 軽いおりものの異常に気づくことがあります。 | – |
症状詳細 | ■おりものの悪臭(生臭い)を訴えることがあります。 ※特に性交後や月経中は匂いが強くなることがあります。 ■灰色のおりもの ■水っぽい、さらさらしたおりもの ■外陰部の軽いかゆみ、腫れ | – |
放置リスク | 妊娠中の方は、胎児を包んでいる膜の 感染症(絨毛膜羊膜炎) が起こり、子宮口が柔らかくなり開き、 早産・流産のリスクが高まる可能性があります。 | – |
検査ができるまでの期間と検査方法について
女性 | 男性 | |
症状が出る までの期間 | 自覚症状があれば、早めに医療機関で 診断を行った方がよいでしょう。 | – |
検査方法 (性器検査) | 医師による評価とおりものや 子宮頸部の分泌液の検査を行うことで、 診断を確定させます。 | – |
治療方法
細菌性腟症は、膣洗浄と抗菌薬で治療します。抗菌薬は、膣錠やクリームを使用する局所療法と内服する全身療法がありますが、局所療法の方が主流になっています。いずれの場合でも、通常7日から10日投与することが一般的です。患者さんの状態や合併疾患によっても治療方法が変わりますので、具体的な治療方法については、医師と相談してみてください。
(産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編 2017)
予防方法
デリケートゾーンを衛生的に保つことで予防が可能ですが、膣内をきれいにするために、あまりに多く膣内を洗うと、細菌が洗い流されて膣内環境のバランスが崩れてしまうことがあります。過度の膣内洗浄は控えましょう。
また頻回の抗生剤投与や、ストレスや喫煙などが、膣の正常な細菌叢である「乳酸桿菌」を減らしてしまう可能性がありますので、注意しましょう。
この記事の監修医師
ひまわり医院
伊藤大介 院長
東京大学医学部医学科卒業
東京大学医学部 博士課程修了
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